四街道市などで生産・販売する「生牧草」が人気を博しているという。購入した動物の飼い主らから「動物たちの食いつきが違う」と、全国から注文が絶えず、動物たちの舌をうならせている。

「生牧草の始まりは競走馬のためでした」。創業当時、競走馬に食べさせるものがほとんど米国産の乾燥牧草だったため、「少しでも新鮮でいい物を食べさせたい」と厩務員(きゅうむいん)や馬主らから相談を受けたのがきっかけだった。

昭和51年1月から生産や販売を始め40年以上が過ぎ、生牧草の販路は競走馬にとどまらない。東京・上野動物園のゾウなども生牧草の“愛好家”だ。全国各地の動物園にも広がりを見せるほか、飼っているペットに健康的なものを食べさせたいという個人の要望も舞い込む。平成10年からはインターネット通販も導入。全国からの注文が相次ぎ、年間出荷量は合計で約1460トンにも上るという。

開発にあたっては、多くのこだわりがあった。同社の生牧草はイタリアンライグラスなどイネ科の植物や、ルーサンなどマメ科の植物など約10種類を農薬や化学肥料を一切使わない無農薬有機露地栽培したものだけから成っている。

農薬や化学肥料を使用しないのは、「短期間で結果は出るが、異常気象などに弱く、安全面でも問題があるため」という。このほかにも土の状態や天候などを毎日計測・記録し、研究を重ねて1年を通じて安定供給ができているという。

出荷でも「生」ならではの大きな特徴がある。

収穫された生牧草は速やかに大型冷蔵庫に運び込まれ冷やされる。その後、注文ごとに草をブレンド、自社便や冷蔵宅配便で消費者に配送する。原則全国に注文翌日に届けられる。生牧草だけあって、新鮮な状態で、動物たちの元に届けるのは絶対だという。

一年中出荷を続けるため四街道、千葉、市原、佐倉の4市に畑を分散、27年には北海道でも畑の運営を始めた。畑の面積は出荷に必要な耕作面積の3倍を保有、どこか1カ所で不作となっても、安定供給を維持するためだ。

「動物たちにとって生牧草が届かない、という状況は死に直結する。何があっても大丈夫な体制を取ることが大事」

また、畑はもともと耕作放棄地だった場所が大半で、そうした荒れた土地を生牧草の生産地として活用することで、地域にも貢献しているという。

生牧草を届けた際の動物たちの反応も励みになる。「厩舎(きゅうしゃ)に生牧草を届けると、馬たちが前足を掻く。『早く早く』とせかしてまで食べたがってくれる」と、長男の城光さんは笑顔で話す。このほかにも「夏バテで食事を取れなかったのに、生牧草なら食べてくれた」などの飼い主の喜びの声が届くこともある。

「農業は生産だけしていれば良い時代ではない。農業を通して人を笑顔にする『エンターテインメント・アグリ』を考えていきたい」。有料で畑の一部を開放し、来場した動物たちへの生牧草食べ放題サービスなどの事業も行っている。

全国の草食動物たちが愛する生牧草のために、今後も熱い思いを胸に、こだわりの生産や販売が続く。

産経新聞